毎日少しずつ日も短くなり、朝晩は過ごしやすい季節となってきましたね。福島県の高校演劇としては、いよいよ地区コンクールが始まる時期となりました。(今年は9月開催が2地区あります!)すべての地区で上演順が決まり、各校においてはよりいっそう稽古に力が入ることでしょう。
ところで、「コンクール」というと皆さんはどのようなイメージを持ちますか?「コンクール」を辞書でひくと、「競技会・競演会」とあります。つまり「競う」ということですね。そうすると当然、「順位がつけられる」=「勝ち負けがある」ということになります。演劇もそうですが、絵画や音楽などの芸術作品に「順位をつける」ということに違和感を持つ人は少なくないようです。さらに、「審査基準」が明確ではないところに不満を持つ人もいらっしゃるようです。
以前、石原哲也氏が「演劇のコンクールとは料理と同じで、カレーライスとかつ丼を目の前に出されて、どっちが優れていますか?と聞いているようなものだ。」と言っておられました。なるほど、素材も調理方法も違うものを同等に評価しようとすることにそもそも無理があるということです。(でもそういえばその昔、『料理の鉄人』や後継の『アイアンシェフ』というテレビ番組があって、ある食材をテーマとして競って勝敗をつけていましたが…。見ている分には面白いのですけどね。)スポーツであれば力の差というものがはっきり分かりますが、芸術作品は何をもって優れているかという判断は非常に難しいといえます。石原氏は「結局は自分たちがお願いをした審査員に委ねるしかない。審査されるのが嫌ならばコンクールに出ないことだ。」とも言っています。
確かに人から「評価される」ということは非常に嫌なものですよね。良い評価なら大歓迎ですが、悪い評価は「批判」とも受け取れ、決して良い気分にはなりません。けれども、悪い評価は改善への第一歩です。「批判」と「評価」はまったく違います。ですから私たちは改善の余地のある評価を真摯に受け止めて自分の成長につなげなければいけません。
とくに、高校演劇における審査(評価)とは、絶対的なものではありません。もちろん、「舞台づくり」における技術的なものは最低限クリアしていることは前提とは思いますが(例えば暗転処理など)出場校の作品そのものを否定しているわけではなく、他校との相対的なものであることは理解していただきたいです。(同じ作品でも、もしかしたら去年やったら推薦されていたかもしれません。)だから、上位大会に推薦された学校は、自分の学校の作品よりどこか「ある部分」においてちょっと良かったのだと思うことにしましょう。(というか、そう思ってないとやってられませんよね。気持ちはよく分かります。)最後に、石原氏はこうも言っておられます。「ちょっと違うなと思った審査員は次からお呼びしなければいいのです。」と。つまり、審査員を「評価」するのは実は私たちなのです。
さあ、いよいよ地区コンクールが開催されます。今年はどんな舞台作品が県コンクールにお目見えするのでしょうか。今から楽しみです。お時間のある方はぜひお近くの会場まで足をお運びください。きっと高校演劇のファンになっていただけることでしょう。(O)