2月10日(土)に、中野あくとれにて「高校演劇シンポジウム」が開催されました。これは、日本演出者協会のフェニックスプロジェクトによる企画で、福島県の高校演劇部員らをパネリストとして迎え、高校生たちの生の声を来場者に届け、会場の皆さんと一緒にこれからの福島や福島における演劇活動を考えていきましょうというものです。震災後7年が経過しようとしている現在においても、福島県の高校演劇では震災や原発事故をテーマにした舞台作品が上演され続けています。その意味と上演における葛藤について、上演した高校生自身が熱く語ってくれました。
シンポジウムに先立って、岩瀬農業高校演劇部が「サテライト-2011-」を上演してくれました。「サテライト校」とは、福島県の浜通りにある学校が、震災及び原発事故により他地区の別の学校に校舎(学校機能)を移し、避難した生徒たちの学習を存続させる措置をとる学校のことを指します。(なお、現在ではすべてのサテライト校がその役割を終えています。)他地区に避難した生徒は、その地区の高校に転校するか、自分がいた学校のサテライト校に通学するかの選択を迫られます。
主人公の女の子は別の学校への転校を選ぶのですが、その学校に母校がサテライト校して来ることになりました。元の担任もサテライト校に勤務しています。新しい学校になじめずサテライト校にちょくちょく顔を出す主人公と元担任との心の交流という二人芝居ですが、見る者を引き付ける迫真の演技で、客席では感動の涙も見られました。
そんな福島の当時の現状を知っていただき、11名の高校生がステージに並びシンポジウムが始まりました。震災当時、小学生だった自分たちが、なぜ震災や原発事故をテーマにした作品をやっているのか?正直に言えば、実はやりたくなかったとか、そんな作品をやることに抵抗感や罪悪感を感じたりしたとかという発言があり、高校生たちの葛藤が分かりました。しかし、それでも作品をやることの一番の理由は、福島を知ってもらいたい、忘れてほしくないという思いからなのでした。小学生のときはよく分からないまま当時を過ごしたものでしたが、高校生になって改めて世の中を見ると震災はまだまだ終わっていないことに気づくのです。そして自分たちの表現手段である演劇を通して、自分たちも深く考え、他人事ではない当事者であることにも気づき、多くの人に知ってほしいと思うようになったとのことでした。
観客は完成された舞台だけを見て、高校生たちが問題意識を持って上演していることに様々な感興をおこしますが、作り手である高校生からすると、部内では本当にいろいろなことがあり、決して一枚岩ではないということも分かりました。高校生自身も悩みながら震災や福島に向き合っていることに、多くの来場者が改めて感動したものでした。
今回のシンポジウムは非常に意義深いものがあり、また一つの問題提起でもありました。来場された皆さん、本当にありがとうございました。そして、日本演出者協会のフェニックスプロジェクト実行委員会皆さまも本当にありがとうございました。